彩の国進学フェアに行った話
2016年7月16日、息子を連れて彩の国進学フェアに行った。埼玉県の高校関係者が集まり、中学生に自校のアピールをするイベントだ。
息子は中学1年生。この進学フェアの来場者の大部分は中学3年生だ。私は、ウチの子には少し早いかなと思いつつも、なるべく早いタイミングで行くべきだと思っていた。小学校を卒業して中学生になると、急に定期テストで尻を叩かれる。学年順位も通知されたりしていて、息子は、やや戸惑っているように見えた。
なぜ、勉強しなければならないのか。息子の心の中へ、勉強の動機付けが必要だろうと私は考えた。それをしなければ、これから中学3年間、また高校生になって大学受験をするまで、やりたくない受験勉強に苦しむことだろう。
どうせ勉強しなければならないのなら、いくらかでも気持ち良く、やる気を持って勉強できるようになって欲しい。そういう気持ちを込めて、私は中学1年生の息子を、この進学フェアに誘った。
息子は面倒臭がっている。まあ、当然の反応だ。息子は、まだ中学1年生になったばかりだ。高校受験は、はるか先の未来だと感じているのだろう。
こんな感じで、イヤだと言う。あんまり無理強いするのも良くない。1、2分ほど勧誘してダメだったので、おとなしく引き下がる。
一週間後。もう一度トライだ。
私の「午前中だけ攻撃」は有効だったらしい。少し態度が軟化した。
私は埼玉県立越谷北高校出身である。理数科を推薦で受けて落ち、普通科の一般入試で受かって入学した。越北がいまどんな感じになっているか知りたいというのは、それはそれで私の本音である。
息子は納得してくれた。良かった。
スポンサーリンク7月16日当日。開始時刻の10時ちょうどくらいに、会場のさいたまスーパーアリーナに着いた。
画像引用元:Saitama Super Arena – Wikipedia
この日は、埼玉県の中学生向け業者テストである「北辰テスト」の実施日と重なっていたらしい。埼玉県では、北辰テストの結果を見て、高校側が試験前に合格確約を出したりする。3年生にとっては高校試験日本番に次ぐ重要な日だ。そのため、この日の進学フェアの参加者は少なかった。私たちにとっては幸運だ。今回の進学フェアは土日開催で明日もあるので、明日は来場者が集中して激混みなのだろう。
埼玉県の私立高校は、北辰テストの結果をもとに、受験生に合格確約を出す。北辰テストの結果を私立高校の先生に見せると、その高校が求める以上の結果が北辰テストで出ていれば、それで合格確約が出るのだ。合格確約が出た場合、その子は、受験日には受験に行って名前さえ書けば合格にしてもらえる、ということになる。
こういう、埼玉県の高校受験の基礎知識も覚えてもらわなければならない。この会話ができただけでも、この進学フェアに来た意味があるというものだ。
まずは、越谷北高校のブースに行く。ブースには5組ほどの親子が並んでいた。
最初に越谷北のブースに行った理由は、私の出身校ということもあるが、理数科があることが大きな理由であった。息子に、高校からは専攻する学問にいくつかの選択肢があることを実感してもらいたかったのだ。
息子は、どちらかというと理系科目の方が強い。もしかしたら興味を持つかもしれないという考えもあった。
私たちの順番が来た。
息子は一応あいさつしたが、表情は硬い。興味がないのだろう。最初が越北ってのは失敗したか。
ブースにいる越北の人はフレンドリーだった。良い人に当たったなと思った。しかし、息子の態度は硬い。ううむ。
越北の人は色々説明してくれた。理数科特有の実験カリキュラム、課題研究、卒業生を迎えての特別授業など。私としては、この越北の人が頼もしく感じられた。
しかし、息子の表情は変わらない。やはり興味を持てないようだ。
説明頂いた時間は15分ほどだっただろうか。息子の反応を見て、少し早めに席を立った。
理数科では興味を持てないか。ならば、もう少し具体的な職業をイメージできる学校の方がいいかもしれない。
越北の二つ隣に、越谷総合技術高校のブースがあった。ちょうど良い。ここの話を聞こう。
越谷総合技術も、私が中学生時代の志望校だった。中学2年生の頃、越谷北を志望する前に受験を考えていた。なぜかわからないが、普通科の高校に行くのがイヤだったのだ。普通ではない何者かになりたかったのかもしれない。
息子の背中を押しつつ越谷総合技術のブースへ。息子は飽きているようだが、私に従った。午前中は付き合うという約束を果たそうとしているようだ。
越谷総合技術高校は、学科が電子機械科、情報技術科、流通経済科、情報処理科、服飾デザイン科、食物調理科の6つある。普通科はない。
ブースの受付では、どの学科の説明を聞きたいか確認された。息子はプログラミングに多少の興味を持っているらしいので、それを教えてくれる情報技術科を選んだ。
ブースは、越谷北より混雑していた。越谷総合技術は、偏差値はあまり高くない。50~55くらいだろうか。偏差値の低い人は、そもそも進学フェアに来ない率が高くなると思う。だから、ここを訪れる人は少ないだろうと思っていた。意外な人気だ。
息子が何か喋るかと思って少し間をあけてみたが、無言だ。そりゃそうか。私が応えた。
普通科・理数科以外の説明を受けるのは、私自身が高校受験した時も含めて初めてだ。少しワクワクする。
ふむふむ。そういう学科なのだから当たり前だけど、高校卒業した18歳でプログラマーやSEとして若いうちから働けたら、楽しいだろうな。私は大学院卒だから、働き始めたのは24歳だ。大学ではダメ学生だったから、18で働いてお金を稼げる子たちに若干の劣等感を持っていた。
Cか。硬い言語だな。今だと、javaとかじゃないんだろうか?少々意外に感じた。
ゲーム!それは楽しいだろうな。ゲームを作ってみたいと考える中学生の子はたくさんいるだろう。その夢をかなえつつ技術も身に付けていけるのだ。
初音ミクという言葉を聞いて、息子の表情が少し変化したように感じた。おそらく、学校の先生の口からその単語が出るのがすごく意外だったんだろう。私も少々びっくりしたが、それよりも息子に反応があったことに驚き、嬉しく感じた。
なるほど、AO入試と指定校推薦か。しかし、それにしても3分の1が大学進学とは。
芝浦工大に行けるなら、大したものだ。しかも首席とは、素晴らしい。こう言っちゃなんだが、この高校は、偏差値50そこそこなのだ。高校入試時点でそのレベルだった子が、芝浦工大で首席を取ったのだ。すごい成長だ。
芝浦工大は、東大とかと比べるとさすがに超一流とは言えないが、名のある大学だ。「超一流校」ではないかもしれないが、「一流校」とは言っていいだろう。
例えば、埼玉県内で大人気の高校である市立浦和からは、毎年40人程度進学している。市立浦和の偏差値は69だ。一方、越谷総合技術の偏差値は50そこそこ。高校入試時点でこれくらい差がついている子でも、一流校に入れるのだ。中学までの抽象的な学問に飽き飽きしている子なら、ここに入って目一杯楽しく授業を受けるのも良い選択肢のように思えた。この高校は良い選択肢の一つになりそうだ。
なんだかすごくいい高校のように思えた。だから、気になっていた疑問を一つぶつけてみることにした。
ザックリとした質問で申し訳なかったが、聞いてみた。だってそうだろう。偏差値50くらいの子の意識って、なんとなく言われるまま適当に勉強している子が多いと思う。
ただそれは、やはり子どもによって色々です。持っているものは優秀でも、たまたま中学時代に勉強する気になれない時期が続けば高校入試時点での偏差値は上がりませんし。本校の教育内容は普通科とは違いますので、中学時代とは違う新鮮な気持ちで授業に臨めるというところはあるのだろうと思います。
ふむ。秘訣っぽいのはなさそうだ。でも、おおらかな気持ちで忍耐強く子どもたちに接してくれそうだなと思った。
もう一歩踏み込んだ答えが欲しかったが、この辺で時間切れ。ブースを後にした。ブースから10歩ほど歩いたところで、息子がつぶやいた。
おおそうか。面白いと思ってくれたか。それならば、来た甲斐があった。
やはり、職業に直結するような学校の話の方が、中学生の心には刺さるのだろうか。私も中学生時代、同じような気持ちで、この学校をまぶしく見ていたような気がする。
非常に満足だ。来てよかった。午前中で終わらせるという約束だったので、これで切り上げて帰った。